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社長の話を聞いて私も藍さんもしばらく沈黙していました。
しかし、唐突に藍さんが思い出したように尋ねました。
「あれ、確か社長の奥さんの名前って……」
「ああ、気づいちゃったか、うん、玲さんだよ」
それは高遠さんの今の話に出てきた女性でした。
「実は僕もあまり性に合わないこういうお店に通い始めたのも玲さんに一目惚れしたからなんだ」
社長は恥ずかしそうに続けます。
「だからあの時彼女に愛人の話が出たすぐあとに意を決してプロポーズしたんだ。もちろん、議員の親父を中心に水商売の女性ということで大反対されたよ」
高遠さんは当時を思い出しているようでした。
「けど、僕は彼女が満足に生きていけるように仕事に邁進して、世の中に許しを請うてきたつもりだよ」
社長の表情は落ち着いていました。
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