197人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
「力を持っていない者は社会に自分が生きていく許可をもらわないといけないんだ。ある人は時間を捧げて、ある人は労働を捧げて、ある人は知識を捧げて……」
その話は皮肉などでは全くなく、むしろ彼女を諭しているような口調でした。
「君に力はないが、美貌というものをもってこの社会に生まれた、そしてそれをうまく捧げて世間に許しを請わなければ生きていけない。現に君は今このお店で男達に対して媚びを売って生活しているじゃないか」
当真さんの話に玲さんの表情はさすがに動揺しているようでした。
「そして、僕は君の美貌と体を最も高い報酬を払って捧げてもらおうとしているんだ」
かすかに……玲さんは体を震わせました。
「まあ、今日の話は玲にとってもいい話だ、もう一度よく考えておいてよ」
当真さんの考え方は人間というものを善や悪というもので見ているのではなく、もっと客体的……
そう、人間というものはそういう善と悪、両方の性質を元来持っている。
だから、人間の行動のいわゆる善悪の要素には頓着せず、実利だけを取っていく。
そんな風にとらえているようにも感じられました。
その日からしばらく経ったある日、当真社長は突然失踪しました。
もちろん警察なども彼の行方を捜索しましたが、発見には至りませんでした。
その後、手がけていたテーマパーク跡は行政管理心霊スポットの中でも最悪のものの一つというほどの呪いの忌地へと変貌していました。
最初のコメントを投稿しよう!