第1話 『潤い』

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(はる)、おはよう!」 我に返って振り向くと、親友の(てる)が心配そうな表情で僕を見ていた。 「俺、ずっと春の後ろに居たの気付かなかった?」 「え、ああ...昨日あんまり寝れなくて」 そこまで広くないバスの車内に居た親友の存在に気づけないくらい、自分の悩みとフラストレーションが崩れる寸前まで積み上がっているんだと、改めて自覚した。 「なんだよ!いつもの事じゃん!そういえば春休み、どっか行った?」 「いや、本屋さんに何回か行ったくらいかな...」 インドア派の大会があれば、僕は決勝まで楽勝で上り詰めるだろう。 と、宣言できるほど僕は普段外出をしない性分だ。 「ええ......誘ってよ!じゃあ来週の土曜日どっか遊びに行こうぜ!」 「たまにはいいよな!どうせ春、予定ないだろうし?」 どうせって、親友だからこそ許すが、赤の他人だったら僕にとって聞き捨てならない一言だ。 「おう......そうだね。たまにはどっか行こう」 久しぶりに予定ができた事によって、積み上がった物が 少しだけ減ったような、そんな気がした。
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