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穏やかで優しい父を私は好きだった。
でも、
今はそれ以上に大切な人がいる。
彼と一緒にいたい。
「よろしくお願いします」
私は頭を下げた。
「パパ、
ごめんなさい」
それしか言えなかった。
父は一瞬、
天を仰いだ。
漣さんは頷く。
この人について行けばきっと大丈夫、
そんな確信があった。
苦虫を噛み潰している祖母とニコニコしている曾祖母、
苦悶するような父と能面のように無表情の母。
漣さんはどこか楽しそうな挑戦的な眼で、
ヒロト君は当事者なのに普段通り穏やかな笑みを浮かべていた。
「決まりだな。
明日からうちのリンクに娘を寄越してくれ」
父は項垂れ、
漣さんはヒロト君と一緒に立ち上がる。
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