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そう思うと出る気になれなくて、 私はそのまま温室の隅に蹲っていた。 どれくらいの時間が経ったのか、 さすがに心細くなった七歳の私が泣いていると、 温室に入って来た人影があった。 「レイナ?」 パパとママのお友達の、 背の高いお兄さんだった。 「ずっとここにいたのか?」 かろうじて頷くと、 私はいきなり抱き上げられた。 彩香がいるからパパにだってこんな風にされるのは滅多になくて、 赤ちゃんの愛梨が産まれてからは尚更だからとてもびっくりした。 「泣いてたのか?よかった、 見つかって」 お兄さんはそう言って、 とても優しい顔で笑ってくれた。 もう十年も前、 私が彼を大好きになった日。
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