俺は君を幸せにするために神様になった

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大神…さん? 「ああ、大神さんてのは、俺ら神様の一番偉いヤツだ。元カマキリだからだかなんだか知らねーけどな?やったらめったら目力があってさ…こえーんだよ、あいつ。そのくせ絡むと子供っぽくてすぐムキになるしよ…って、何言わせんだ!聞かれてたらどうすんだよ!あいつ地獄耳なんだぞ!」 …しーっと指を立て、俺に身を寄せるソイツ。 「ええか?とにかく、大神さんはあんたの“願い”にチャンスをやろうと考えた。だからここにあんたは来た。“藤野千明”の幸せを見届けたいんだろ?幸せになる手伝いをしたいんだろ?」 な、なぜ…それを…本当にあんたは一体… 目を見開いたら、ニカッと笑い、そのままそこにどかっとあぐらをかく。 「俺か?俺はまあ…そこそこの神様だ!」 ふふんっと上機嫌で鼻を鳴らし、杖をクルンと指先で回してパッと消して見せた。 「…ここは藤野千明が通勤で使っている道の途中にある神社だ。俺はここの所謂、主ってやつ。んで、今居るところは神棚の中で…まあ俺の塒だな。」 神社で…ここは神棚の中… 改めて周りをみていたら、一緒になって、そいつも周囲に視線を送る。 「まあ、神様が住んでる所は神社って相場が決まってるからな。んなことより、どーすんだ?なるか?神様に。」 …さっきから聞いていると、随分と軽々しく神様になれる様な口ぶりだな。 眉間に皺をよせる俺に、自称、神社の主も習って眉間に皺を寄せる。 「さっきも言ったろ?神様は曖昧な存在だ。だから、なることはなれるんだよ。大神さんが『こいつ』と思ったヤツは。でもって、あんたはそのお眼鏡にかなった。 あんたの想ってる藤野千明は、“恋愛”において酷く運の無い女でな。丁度今、幸せとは反対の方向にまた引き寄せられとる。あんたが彼女に幸せになって欲しいなら…彼女の幸せを見届けたいのなら、今はあんたが神様として藤野千明と対面する絶好のチャンスってわけだ。」 「どうだ?なるか?」と覗き込む、自称、神社の主。 お世辞にも威厳があるとは言えない、ふにゃふにゃとしたその笑顔は若干嘘くさいとも思ったが、痛みもなく、格好も何故か布を纏っているだけのような格好で居る今、夢をみているのかもしれないとも考えた。 目の前のこの男は「余命幾ばく無い」と言った。だから、死ぬ前に“願望”で見ている夢なのかもしれない、と。
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