雨音

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ザァー、と、雨音が響いている。学校の昇降口で、傘を差して歩き出す生徒達を見送る。 今日の天気予報は、午前中快晴、夕方頃から雨。今日は職員会議で生徒は午前中で下校。その筈だったのに。内申を気にして生徒会に入った事を今更になって悔やんだ。今日生徒会活動がある事を覚えていたら、傘を忘れるなんて事は無かった筈なのに。一向にやむ気配のない鈍色の空を見上げ、僕は一人、溜め息を吐いた。 「傘、無いの?」 突然後ろから聞こえた声に驚き、振り向く。そこには、僕と同じ、生徒会の先輩の姿。短めの髪から肩にかけて、水滴が滴り落ちる。心臓が早鐘を打つ。そんな僕の気も知らず、先輩は優しい微笑みを向けている。 「…は、はい。」 短く返事をすると、彼女は僕の隣にやって来た。頬が熱くなる感覚。僕の肩くらいまでの身長の先輩を見下ろす形になってしまい、また、視線を上へ向ける。空には相変わらず、重く、どんよりとした雲が架かっている。 「雨がやむまで、一緒に居ても良いかな。」 不意に、隣から問い掛けられた。え、と思い、其方を見ると、困ったように笑う彼女と目が合った。 「私も傘、忘れちゃったんだ。」 戯けた様に笑う先輩。その表情が、本当に無邪気で、それでいて、残酷で。 ザァー、ザァー。やむ気配の無い雨の音が、屋根や地面を通して、僕の耳へと届く。 暫く沈黙が続く。傘を差して下校する生徒達の談笑の声が遠退いていく。
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