1,とどのつまり非日常

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1,とどのつまり非日常

 鐘の音が聴こえる。  今日が、終わる。今日が――始まる。  *** 「あれ、南雲今日も帰るのか?」 「わるい、用事があってさ」  ホームルームの挨拶は、俺にとって終わりではなく始まりで。  前の学校から使い回しのスクール鞄へ無造作に筆記用具を詰め込めば、鞄とは対照的にようやく履きなれてきたピカピカの学校指定スリッパで、ワックス掛けされた廊下を勢い良く蹴り上げる。 「南雲ってさ、いつも帰り早いよな」 「親御さんが共働きって言ってたし、家の事で忙しいんじゃないか」 「いや、案外前の学校に彼女がいて毎日電話でもしてるんだろ」  全部聞こえてるぞ、馬鹿。  どれもこれもハズレの憶測に、心の中で舌打ち一つ。お前らはこれで帰るだけかもしれないけれど、こっちはそんな呑気な状況じゃないんだ―― 「やばい、間に合わない……!」  靴を履き替える時間も惜しくて、そのまま手に持って走りながら外でローファーに足を突っ込む。足についたグラウンドの砂が入って不快感しかないけれど、今はそんな事言っている時間がない。ごめんローファー、あとでちゃんと砂出してやるから。     
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