1,とどのつまり非日常

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 目の前の古びた建物は、人気のない神社の社で。俺はそこに設置された賽銭箱の前に立つと、溜息まじりに小さながま口財布を出す。ちょっと色褪せた布のそれの中にあるのは、大量の五円玉達。これが俺の、『 定期代』。 「ほらよっと!」  気持ち力を込めて一枚五円玉を投げれば、そいつは弧を描いて賽銭箱の方へと吸い込まれていく。俺はそれを見ながら屈伸運動をして、軽く助走をつけて地面を蹴りあげる。よし、このまま突っ込めば―― 「雨じゃん、おはよー!」 「なんなにこれ」 「どわ――!?」  と、思ったところで目の前に突然現れたのは、一ツ目の目西とマスクをした口裂け女のくちちゃん。そしてくちちゃんが物珍しそうに見ているのは、さっき俺が投げた五円玉―― 「って、くちちゃんそれだめ!」 「けどこれ、ただの五円玉」 「俺の定期代!」  このままじゃ本当に遅刻になってしまう。くちちゃんの言葉を遮りながらもう一枚、五円玉を取り出し今度こそ賽銭箱の中へ投げ込めば、賽銭箱が青白く燃えるような光を放ったと同時にその向こうにある社から鍵の開く音が聞こえる。よし、まだ、まだ間に合う! 「あ、雨があけてくれた!」 「雨って、おいら達とは違うあけ方するよな」 「うるさい来るならさっさとしろ、しめるぞ!」  二人を乱暴に掴みながらも中に入り、これまた勢い良くしめれば溜息一つ。目の前に広がっていたのは古ぼけた社じゃなくて。
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