1,とどのつまり非日常

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 神やあやかしの機嫌は損ねない方がいい。俺が『こちら』の学校に通い始めて、一番最初に学んだ事であり―― 一番、忘れてはいけないこと。 「ほら、三人とも座れ」 「はーい」 「雨、わたし喉が乾いた」 「おいらも」  二人の言葉は聞こえないふりをして、俺は一番後ろの真ん中に用意された自分の席に腰をかける。 「おはよ、雨くん」 「おはよ、ちょうちゃん」  向かって右隣の席に座る座敷わらしのちょうちゃんに、小さな声で挨拶を交わす。少し頬を赤らめて笑うちょうちゃんは、今日も言葉では表現できないような可愛さがある。 「わてに挨拶はないのか、雨」 「本日の営業は終了しました」 「まだ始まったばかりだぞ」  対してその逆、左隣から聞こえてきた犬の口元を模した面頬をつけた奴の声には、適当にあしらって。これが俺の――二つ目の日常。 「今日は一段と機嫌が悪いな、雨」 「当たり前だ。今日は遅刻じゃないと思ったのに」 「けれども雨くん、最初よりは早くなってると思う」  そんなちょうちゃんのフォローすらも、今の俺には情けなく感じる。本当に、今日は行けたと思ったんだけどさ。 「……いや」  それでも心のどこかで、嫌な予感はしていた。無理かもしれないってのは感じていた。所謂いつもの、第六感ってやつ。 「けど私は、二つの学校にちゃんと通う雨くんがすごいと思う」 「ちょうちゃん……!」     
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