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顔を上げ、困ったように笑う先生に、半歩だけ詰め寄った。
すぐに先生がはっと息を飲む。
「きっと、後悔しますよ」
泣きだしそうに歪む、眼鏡の奥の目に、引き返すならいましかないのだと思った。
でも私は先生の口から感想を、――返事を、聞きたい。
「かまいません。
お願いします」
「わかりました」
俯いて気持ちを落ち着けるように一度深呼吸し、あたまを上げた先生の顔からは迷いが消えていた。
「水原さん」
先生があの、深い情愛の声で私の名を呼ぶ。
それだけで全身をぞわぞわと歓喜の波が駆け抜け、涙があふれてくる。
「とてもいい小説でした。
この先の物語はあなたと僕で作っていきましょう」
「早乙女先生……」
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