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「ごめん。どうにも覚えていないみたいだ」
「まあ、旅していたレイルスには分からないか。俺だよ、グランツだ!」
「嘘だろ!?」
レイルスの記憶にあるグランツと、目の前の美丈夫の姿が微塵たりとも一致しない。それもそのはず。グランツは確かに金髪だったが、レイルスよりも背が低く、もっと細身でひょろひょろしていた。
いつも大人しくて口数が少なく、ティーダや他の友人達に引っ張られるように遊びに連れ出されては、体力がきれて地面にぶっ倒れるような少年だったのだ。
そんなグランツが何処をどうしたら、旅に出ていた自分よりも体格が良くなっているなど想像出来るわけも無い。
「その様子じゃ覚えてはいたみたいだな。俺はすぐ分かったぜ、あの特徴的な赤い髪とそのまんま成長したような顔つきでな」
「あ、ああ。そういうグランツは随分と変わったな。本当に分からなかったよ」
レイルスは未だに信じられない表情で金髪の美丈夫――グランツを見つめる。その口元は微妙にひくついていた。グランツはそんなレイルスの様子に気付かないようで、あっけからんと笑っているだけだ。
「親父の店を手伝うようになったら、自然とこうなっただけだからな。特に意識して何かしていたわけじゃ無い」
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