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レイルスのリアクションが思っていたものと違ったせいか、グランツは残念そうに口を尖らせる。
そんなグランツの様子にレイルスは少し申し訳なさそうに苦笑するだけだった。
クラリスが冒険者になっているというのは確かに驚く内容ではある。
ただ旅をしていたレイルスからすると女性が冒険者であることは、そこまで珍しい事では無いのだ。現にレイルスの知り合いだけでも一人、二人ならばすぐに浮かぶ。
それに、レイルスの記憶の中に存在するあのクラリスならば、さもありなん、と思ってしまった。少なくとも軟弱少年が筋肉美丈夫に変わるほどのインパクトは無いだろう。
「いや、悪い悪い。なんかしっくりくるイメージだったから」
「そうか? いや、そんなことはないと思うんだが……うん? アレってレイルスが出て行った後だったか……?」
「え? 何かあったのか?」
「気にしないでいい、気にしないでいい。どうせいつか帰ってくるだろうから、その時の楽しみにとっておけ」
「なんだよ、それ」
レイルスとしては教えてもらいたいところなのだが、グランツどこか悪戯小僧のような笑みを浮かべたまま口をつぐむ。どうやら、内緒ということらしい。
「で、レイルスが帰ってきたってことは、もう一人前の魔導技師に慣れたのか?」
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