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「莉子……俺……」
凪の声が震えていた。私はその声を忘れないように、じっと耳をすます。
「俺、莉子のこと……」
けれど次に凪が口にした言葉は、私の思ってもみない言葉だった。
「莉子のこと、ずっと好きだった」
「……え?」
ふわっと頬に、あたたかくて、やわらかいものが触れた。はっと気がつくと、私から離れた凪が、真っ赤な顔をして立っていた。
え……なに? いまの……。
遠くでクラクションが軽く鳴る。目をわずかに潤ませて、きゅっと唇を結んだ凪が、背中を向ける。
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