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私は黙ってカレーを食べていた。ふと視線を感じて顔を上げると、私を見ている凪と目が合った。凪は人差し指を立て、それで自分の口元を指す。
「え、なに?」
私も同じように手を当てると、そこにご飯粒がついていた。凪はそんな私を見て、満足そうに頬をゆるませる。私は慌ててご飯粒を取り、凪から不自然に目をそらした。
「凪くん、おかわりは?」
「あ、いただきます」
「莉子は?」
「私はいらない。ごちそうさま」
「なんだよ、姉ちゃん。いつも二回はおかわりするくせに。最近凪が来ると、やけにカッコつけるよな」
「うるさいっ」
私は立ち上がり、寛人の頭をぽかっと叩いて背中を向けた。
「なにすんだよっ、姉ちゃん!」
寛人が勢いよくテーブルに手をついて、グラスの麦茶がこぼれる。
「あー、こらっ! もうやめなさい! ふたりとも!」
寛人とお母さんの騒ぎ声を聞きながら、部屋を出る。ちょうどその時、凪のお母さんが「ごめんください」と言って店に入ってきた。
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