17歳・18

6/7

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/237ページ
「私、忘れないから」  貝殻をぎゅっと握りしめ、私は言う。 「私、凪のお母さんのこと、絶対忘れないから」 「……うん」  凪がうなずいた。私の前で。そして私の顔を見つめて言った。 「ありがと。莉子」  おばさんがいなくなって、あの家が変わっていって。新しい家族の中で、凪はこれからも生きていく。  だけど凪のお母さんは、いつだって私たちの心の中にいる。思い出すのも、忘れないのも、いけないことじゃない。 「あとでひかりやのとこ、こいよ」  凪の声に顔を上げる。 「引退祝いにアイスぐらいおごってやるから。あ、高嶺も連れてこいよ。絶対な?」  凪がそう言って歩き出す。私はその背中を見送る。何度も何度も名前を呼んだ、その背中を――。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加