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「なにが『俺はそんなに心の狭い男じゃない』だよ」
私の隣で凪が笑う。
「あいつの心、めっちゃ狭いじゃん」
「笑っちゃダメだよ。高嶺は私のこと、本気で心配してくれてるんだから」
「『お父さん』だもんな」
凪はまだ笑っている。
「もう……殴られるよ、あんた」
私は大きくため息をつく。そんな私の耳に、凪の声が聞こえた。
「殴られてもよかったんだけど」
隣にいる凪を見る。
「いっそ殴ってもらったほうがすっきりしたのに。凪、しっかりしろよって」
凪は私にふっと笑いかけたあと、ゆっくりと前を向いた。
夕陽が海にひかりを映す。私たちは同じ景色を見つめる。
「高嶺は……そんなことしないよ?」
私も海を見つめたまま、つぶやく。
「そんなことしないけど……凪のこと、大事に思ってる」
「……うん」
隣の凪が静かにうなずく。
「わかってる。高嶺がいいやつだってことは、俺が一番わかってる」
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