17歳・19

8/9
前へ
/237ページ
次へ
「なにが『俺はそんなに心の狭い男じゃない』だよ」  私の隣で凪が笑う。 「あいつの心、めっちゃ狭いじゃん」 「笑っちゃダメだよ。高嶺は私のこと、本気で心配してくれてるんだから」 「『お父さん』だもんな」  凪はまだ笑っている。 「もう……殴られるよ、あんた」  私は大きくため息をつく。そんな私の耳に、凪の声が聞こえた。 「殴られてもよかったんだけど」  隣にいる凪を見る。 「いっそ殴ってもらったほうがすっきりしたのに。凪、しっかりしろよって」  凪は私にふっと笑いかけたあと、ゆっくりと前を向いた。  夕陽が海にひかりを映す。私たちは同じ景色を見つめる。 「高嶺は……そんなことしないよ?」  私も海を見つめたまま、つぶやく。 「そんなことしないけど……凪のこと、大事に思ってる」 「……うん」  隣の凪が静かにうなずく。 「わかってる。高嶺がいいやつだってことは、俺が一番わかってる」
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加