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「凪! どこ行くつもり!」
昇降口を出たところで、見慣れた背中を見つけた。
白い給食袋をぶら下げた、黒いランドセル。背の順で真ん中くらいの私より、ちょっと小さい。ゆっくりと振り返ったその顔は、あきらかにふてくされている。
「どこって……帰るんだけど?」
面倒くさそうに答えるのは、波多野凪だ。
私と同じ六年一組で、私と同じ運動会のリレー選手。青地に黄色いラインの入った、お気に入りのスニーカーを履いている。
逃さないようにと駆け寄って、凪の前に立つ。
「あんたねー、高嶺の話聞いてなかったの? リレーの練習するから、放課後校庭に集合って言われたじゃん」
「うるせぇなぁ、莉子は。練習だったら昼休みにやったろ?」
そう言ってまた歩き出そうとする凪のランドセルを引っ張った。
凪が一瞬よろけて、私の体にぐんっと近寄る。
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