12歳・1

3/7
前へ
/237ページ
次へ
(なぎ)! どこ行くつもり!」  昇降口を出たところで、見慣れた背中を見つけた。  白い給食袋をぶら下げた、黒いランドセル。背の順で真ん中くらいの私より、ちょっと小さい。ゆっくりと振り返ったその顔は、あきらかにふてくされている。 「どこって……帰るんだけど?」  面倒くさそうに答えるのは、波多野(はたの)凪だ。  私と同じ六年一組で、私と同じ運動会のリレー選手。青地に黄色いラインの入った、お気に入りのスニーカーを履いている。  逃さないようにと駆け寄って、凪の前に立つ。 「あんたねー、高嶺(たかね)の話聞いてなかったの? リレーの練習するから、放課後校庭に集合って言われたじゃん」 「うるせぇなぁ、莉子(りこ)は。練習だったら昼休みにやったろ?」  そう言ってまた歩き出そうとする凪のランドセルを引っ張った。  凪が一瞬よろけて、私の体にぐんっと近寄る。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加