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「ちょっと凪! サボるつもり? 運動会、明日なんだよ!」
振り返った凪が私を見る。思ったより距離が近い。咄嗟につかんだ手を離すと、凪は表情を変えないままこう言った。
「今さらジタバタしたって変わらないっての。明日はちゃんと勝ってやるから、心配するな」
私の横をすり抜けるように、凪がさっと走り出す。
「あっ! 凪! 待ちなよ!」
叫ぶ私を無視して、凪はあっという間に校門の外へ出て行った。まるで風のように、音もなく。
まったく、あいつは忍者か? だいたい「勝ってやるから」ってなんなのよ。リレーは団体競技でしょ。あんたひとりで勝てるわけないのに。
だけど凪は、走るのがすごく速い。幼稚園のころから、かけっこはいつも一等賞。小学校の運動会では毎年リレーの選手だし、六年生になった今年はアンカーを任されている。
だからと言って、練習をサボっていいわけないけど。
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