12歳・1

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「莉子? どうした?」  背中に低い声がかかった。振り返ると同じクラスの知花(ちばな)高嶺が立っている。  高嶺は私たち赤組の頼れるリーダーだ。 「高嶺。凪が練習サボって帰っちゃった」 「またか。下級生たち、みんな校庭で待ってるぞ」  腰に手を当てた高嶺が、私の前でため息をつく。  クラス対抗の選抜リレーは、四色のチームに別れて、一年生から六年生の代表がバトンを繋げて走る、運動会の中で一番盛り上がる競技だ。目立つだけに責任重大だから、私たちは放課後も残って練習しようと、高嶺を中心に話し合って決めた。 「どうする?」  そう言って、目の前に立つ高嶺を見上げる。高嶺は背が高い。クラスで一番。声も低くて大人っぽくて、チビでガキっぽい凪とは大違いだ。 「しょうがない。凪抜きでやろう」 「あいつ今度会ったら、ぶん殴っとくから」  私の声に、高嶺はおかしそうに笑って言った。 「それはちょっとまずいかな。一応あいつは、うちのチームの期待のアンカーだから。怪我でもされちゃ困る」  高嶺は凪にちょっと甘い。
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