84人が本棚に入れています
本棚に追加
「莉子? どうした?」
背中に低い声がかかった。振り返ると同じクラスの知花高嶺が立っている。
高嶺は私たち赤組の頼れるリーダーだ。
「高嶺。凪が練習サボって帰っちゃった」
「またか。下級生たち、みんな校庭で待ってるぞ」
腰に手を当てた高嶺が、私の前でため息をつく。
クラス対抗の選抜リレーは、四色のチームに別れて、一年生から六年生の代表がバトンを繋げて走る、運動会の中で一番盛り上がる競技だ。目立つだけに責任重大だから、私たちは放課後も残って練習しようと、高嶺を中心に話し合って決めた。
「どうする?」
そう言って、目の前に立つ高嶺を見上げる。高嶺は背が高い。クラスで一番。声も低くて大人っぽくて、チビでガキっぽい凪とは大違いだ。
「しょうがない。凪抜きでやろう」
「あいつ今度会ったら、ぶん殴っとくから」
私の声に、高嶺はおかしそうに笑って言った。
「それはちょっとまずいかな。一応あいつは、うちのチームの期待のアンカーだから。怪我でもされちゃ困る」
高嶺は凪にちょっと甘い。
最初のコメントを投稿しよう!