12歳・1

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 校庭に集まったみんなで、バトンの受け渡しを中心に練習した。  まだ体の小さい一年生も、高嶺の言うことをよく聞いて、真剣に練習している。サボリ魔の凪に見習って欲しい。  下校時刻を告げるチャイムが鳴る頃、空は夕焼け色に染まっていた。  秋が深まるこの季節、日に日に陽が暮れるのが早くなる。  ランドセルを背負い、下級生と一緒に校門を出た。  坂道の下には、夕陽を浴びてオレンジ色に輝く海が見える。五年以上も毎日眺めた、もう見飽きてしまった景色。この坂道を勢いよく駆け下りると、まるで海の底まで吸い込まれそうになるのだ。 「じゃあ、またなー」 「明日、頑張ろうねー」  坂道を下ると少しずつ仲間が減っていき、最後には私と高嶺のふたりだけになった。学区のはずれに住んでいる私たちの家は、学校から一番遠い。だからいつも私は、高嶺と誰よりも長く並んで歩くことになる。 「じゃな、莉子」  海沿いに建つ五階建てのマンションの前で、高嶺が立ち止まる。 「うん、またね、高嶺」  高嶺は小学校に入学する時、東京からこの町に引っ越してきた。それからずっと一緒に、登下校したり遊んだりしている。  この前高嶺の家でテレビを観たとき、東京の光景が映った。私が「高嶺も東京に住んでたんだよね? 羨ましいなあ」と言ったら、「小さい頃のことなんか覚えてないよ」と笑って答えた。それもそうだと私も笑った。  五年の月日が経って、たしかに高嶺はすっかりこの町に馴染んでいる。生まれた時からここに住んでいる私たちと、今は何にも変わらない。
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