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「ちょっとお話してもいいかな?」
私がぼさぼさの頭でベッドの上に起き上がると、凪のお母さんが静かに部屋に入ってきた。
「ごめんね。莉子ちゃん。今まで黙ってて」
おばさんがベッドのそばで立ち止まる。私は黙ってうつむく。
「ちょっと座らせてもらうね」
そう言うとおばさんは、ベッドの端に腰を下ろした。
雨の音はいつの間にか消えていた。窓の外からは、うっすらと西日が射してくる。
「莉子ちゃん。これ、よかったらもらってくれるかな?」
おばさんの手がふわりと近づいて、私の首から何かをかけた。見ると茶色くて細い革ひもに、赤いビーズと白い貝殻がついている。
「海で拾った貝殻で作ってみたの。ペンダントなんだけど。どうかな?」
「かわいい……」
自然と笑みがもれて、小さな貝殻を手のひらにのせる。真っ白な貝殻に西日が当たって、ほんのりオレンジ色に染まっている。
おばさんはきっと、あのショッピングモールで見たネックレスのことを、覚えていてくれたんだ。本当は欲しかったけど、私が遠慮していたことに気づいていて、それでこれならって……。
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