12歳・9

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「ちょっとお話してもいいかな?」  私がぼさぼさの頭でベッドの上に起き上がると、凪のお母さんが静かに部屋に入ってきた。 「ごめんね。莉子ちゃん。今まで黙ってて」  おばさんがベッドのそばで立ち止まる。私は黙ってうつむく。 「ちょっと座らせてもらうね」  そう言うとおばさんは、ベッドの端に腰を下ろした。  雨の音はいつの間にか消えていた。窓の外からは、うっすらと西日が射してくる。 「莉子ちゃん。これ、よかったらもらってくれるかな?」  おばさんの手がふわりと近づいて、私の首から何かをかけた。見ると茶色くて細い革ひもに、赤いビーズと白い貝殻がついている。 「海で拾った貝殻で作ってみたの。ペンダントなんだけど。どうかな?」 「かわいい……」  自然と笑みがもれて、小さな貝殻を手のひらにのせる。真っ白な貝殻に西日が当たって、ほんのりオレンジ色に染まっている。  おばさんはきっと、あのショッピングモールで見たネックレスのことを、覚えていてくれたんだ。本当は欲しかったけど、私が遠慮していたことに気づいていて、それでこれならって……。
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