12歳・9

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「おばさんね、その貝殻におまじないかけておいたから」 「え?」  私の前でおばさんは、いたずらっぽく微笑む。 「心の中で想い続ければ、きっと願いが叶うおまじないよ」 「願いが……叶う」  私は胸で揺れる貝殻をじっと見つめる。見つめていたら、本当に願いが叶いそうな気がしてきた。 「おばさん、ありがとう! 宝物にする!」  おばさんはにっこりと笑って、その手で私を抱きしめる。 「莉子ちゃん。本当にありがとう。凪と仲良くしてくれて」  ぎゅっと私を抱きしめてくれたおばさんは、やっぱりいい匂いがした。
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