86人が本棚に入れています
本棚に追加
桜の花びらが散ったばかりだというのに、午後の陽射しは夏のようにぎらぎらと輝いていた。
「あっつー」
制服のブレザーを脱ぎ、プリントの入ったファイルで顔をぱたぱたと扇ぐ。
今日は部活が休みでよかった。こんな暑い日にグラウンド走ったら死んじゃう――なんて思っている私は、不真面目な陸上部員だ。
「今日の予想最高気温、二十八度だってさ」
私の後ろを歩く高嶺が、スマホを眺めながら言う。
「えー、まだ四月だよ?」
「アイスでも食ってく?」
ポケットから取り出した自転車のキーを、高嶺がチャリンと鳴らす。
「ひかりや?」
「ああ、ひかりや」
「そうだね。行こうか?」
振り向いて高嶺に笑いかける。眩しい陽射しの中で、高嶺も私に笑顔を見せた。
最初のコメントを投稿しよう!