17歳・1

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 桜の花びらが散ったばかりだというのに、午後の陽射しは夏のようにぎらぎらと輝いていた。 「あっつー」  制服のブレザーを脱ぎ、プリントの入ったファイルで顔をぱたぱたと扇ぐ。  今日は部活が休みでよかった。こんな暑い日にグラウンド走ったら死んじゃう――なんて思っている私は、不真面目な陸上部員だ。 「今日の予想最高気温、二十八度だってさ」  私の後ろを歩く高嶺が、スマホを眺めながら言う。 「えー、まだ四月だよ?」 「アイスでも食ってく?」  ポケットから取り出した自転車のキーを、高嶺がチャリンと鳴らす。 「ひかりや?」 「ああ、ひかりや」 「そうだね。行こうか?」  振り向いて高嶺に笑いかける。眩しい陽射しの中で、高嶺も私に笑顔を見せた。
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