17歳・1

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 先に自転車を出した高嶺が、私のことを待っている。  すらっとした長身に、さっぱりとした短めの黒い髪。きちんとネクタイを締めた半袖のワイシャツから、日に焼けた逞しい腕が伸びている。  四月に半袖を着ている生徒はめずらしいが、毎朝天気予報をチェックしてくる高嶺のことだ。この狂ったような暑さを、朝から予想していたのだろう。 「おまたせ」 「ん」  高嶺が自転車に乗り走り出す。私はそのあとをついていく。高嶺の真っ白なワイシャツがやけにまぶしい。  私たちの脇を、ふざけ合いながら、自転車置き場へ向かう生徒たち。明るい笑い声が、風のように通り過ぎる。  そのとき私は、前から歩いてくる男子生徒に気がついた。  校則違反ぎりぎりの茶色い髪に、ゆるんだネクタイ。ワイシャツの袖をまくって、両手をポケットにつっこんでいる。隣を歩く男子ふたりに何か言われ、おかしそうに笑い出す。  特別めずらしいわけではなかった。校内どこでも見かける光景だ。  なのに私は――。  自転車のハンドルをぎゅっとにぎった。すれ違う瞬間、懐かしい景色がふっと頭をかすめる。  夕焼け空。おだやかな海。沈む夕陽――私の隣に座っていた男の子。  キイッとブレーキをかけて足をつく。振り返って後ろを見ると、さっきの男子はもう、制服を着た生徒たちの群れにまぎれて見えなくなっていた。 「莉子? どうした?」  少し先で停まった高嶺が言う。 「ごめん。なんでもない」  小さく笑って高嶺に答える。高嶺も私に笑いかけ、また前を向いて走り出す。私はそれを追いかけるように、勢いよくペダルを踏み込んだ。
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