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「お前さ……そういうのやめたほうがいいよ」
「え?」
高嶺はちょっと困ったような顔をして、私から視線をそらす。
「自分の食べかけ、『食べる?』とか言うの」
「あ……ごめん。高嶺だからいいかなって思っちゃって」
高嶺がふうっとため息をついて、ペットボトルを口にする。高嶺の喉が動くのを、私は黙って見つめる。
「やっぱくれ」
ボトルを口元からはずした高嶺が私に振り向いた。
「は?」
「やっぱりくれよ。アイス」
「意味わかんないなぁ、もう」
私がもう一度アイスを差し出すと、高嶺が顔を近づけてきた。いつもより近い距離で、高嶺のことを見る。高嶺は私のアイスを、シャクっと音を立ててかじった。
「……ん、うまい」
顔を上げた高嶺が満足そうに言う。
「よかった」
高嶺が満足なら、まあいいや。
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