17歳・1

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「そろそろ帰るか。明日テストだから勉強しないと」  高嶺が堤防の上に立ちあがる。 「テストかぁー」  思い出したくないことを思い出してしまった。うちの学校は新学期早々二日間にわたって実力テストがある。  私は海を見つめたまま、ため息まじりにつぶやいた。 「高嶺は大学行くんだもんね。東京の」 「ああ。このへんには行きたい大学がないし。東京には祖父母の家もあるし。莉子は? 進路悩んでたよな? 決まったのか?」 「うん……」  空を仰ぎ、両手を組んで頭の上に伸ばす。 「私はやっぱり就職かなぁ……地元で」 「……そうか」  うちのお父さんは『女の子は大学に行く必要はない』『しかも東京なんてとんでもない』って言っている、今どき化石のような古いタイプの人間だ。  そんなお父さんに逆らえないわけじゃないけれど……でも私には、行きたい大学なんてないし、やりたいこともないし、東京でひとり暮らしできる自信もない。だからこのまま地元で就職するのもありかなぁなんて考えている。  結局私には、高嶺みたいな夢も目標もないんだ。  いつの間にか空の色はオレンジ色に変わっていた。私たちは堤防から降り、家へ向かってまた自転車を走らせた。
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