12歳・2

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「凪?」  慌てて部屋に駆け込むと、凪が居間の畳に座って、私の弟の寛人(ひろと)とテレビゲームをしていた。 「凪っ! あんた何やってんの!」 「あ、おかえり、姉ちゃん」  コントローラーを動かしながら振り返った寛人の隣で、凪も振り向く。  ひとつ年下の寛人と凪は、同じくらいの背格好だ。こんなふうに並んで座っていると、私も時々間違えてしまいそうになる。そのくらい我が家に馴染んでいるんだ、凪ってやつは。 「練習お疲れ、莉子」  悪びれた様子もなく、凪が言う。 「お疲れじゃないよ。練習サボってゲームなんかして!」 「あら、莉子。おかえり。遅かったのね」  台所からお母さんが顔を出す。今日はカレーだな。食欲をそそる、美味しそうな匂いが漂ってくる。 「ちょっとお母さん。なんで凪がいるのよ?」 「ああ、凪くんのお母さんね、親戚の方が急に入院することになっちゃって、病院に付き添っているのよ。帰りが遅くなるから、うちで待っててって」 「そういうこと」  凪がつぶやいて、またテレビに視線を戻す。テレビに映っているのは、最近凪と寛人がはまっている格闘ゲームだ。寛人が「わー」とか「ギャー」とか「やられたー」とか言って、いちいちうるさい。 「凪くん。ご飯食べていくでしょう? おばさんカレー作ったから」 「やった! 今日カレーか! 凪、食ってくだろ?」  寛人が嬉しそうに凪に言っている。昔から寛人は凪のことを、実の兄のように慕っているのだ。 「うん。俺もおばさんのカレー、大好き」  凪の声がする。私は凪の背中を眺めながら、イライラしていた。  どうしてだろう。最近凪に腹が立って仕方ない。
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