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 ワンルームのアパートの中は引っ越し業者の段ボール箱が一杯だった。もう荷物を詰めて積んであるのと、まだ畳まれたままのと。 「すいません。ホントはこんなところに人呼んでも、なんですけど……外は嫌なんだろうなと思ったので」  それで時間に遅れたのか、あらかじめ物を端に寄せて作ってあったスペースに彼は折り畳みのテーブルを出して、買って来たカフェオレを置いた。 「どうぞ。こんなので申し訳ないですけど」 「お構いなく」 「さっき一応掃除機はかけたので」 「気にしないで」  スカートを膝の下に畳んでフローリングに腰を下ろした。正面の窓には白いカーテンがかかって、その向こうには白い空が見えるけれどまだ雨は続いているんだろう。  頂きます、とカフェオレを一口貰って、私は言った。 「ねえ。誰かに言われた?あたしと花村君が居るとおかしいって。人に会わないように家に呼んでくれたり、ずいぶん気を遣ってくれてるみたいだから」  向き合って胡坐をかいている彼は、テーブルに目線を落とす。 「さっきの、ラーメン屋誘った後くらいに、営業部の飲み会で、女の子から近いことは言われました。冗談半分だったと思いますけど……その頃、まだ入社したばかりで緊張もあって、一番話し掛けやすかったのが綾瀬さんだったから、何となく用事見つけては経理行ったりして目立ってたのかもしれません。迷惑掛けてたらすみませんでした」
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