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「そうなんですけど……」  途端に彼は肩を落として溜息をつく。 「……綾瀬さん、俺の荷物に入って一緒に行きませんか。実言うと昨日からろくに飯も喉通んなくて」 「ヘタレ……じゃ、ちょっとこっち」 「はい?」  首を下げたキリンにそうするみたいに、私は彼の頬にキスした。 「……嫌になったらいつでも電話していいから、行っといで」 「……はい」  彼は笑って、軽く私を胸に抱くと、会社に戻って行った。  雨は弱く、私はそのまま傘を差さずに歩いた。   『傘の上の人』了
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