225人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうなんですけど……」
途端に彼は肩を落として溜息をつく。
「……綾瀬さん、俺の荷物に入って一緒に行きませんか。実言うと昨日からろくに飯も喉通んなくて」
「ヘタレ……じゃ、ちょっとこっち」
「はい?」
首を下げたキリンにそうするみたいに、私は彼の頬にキスした。
「……嫌になったらいつでも電話していいから、行っといで」
「……はい」
彼は笑って、軽く私を胸に抱くと、会社に戻って行った。
雨は弱く、私はそのまま傘を差さずに歩いた。
『傘の上の人』了
最初のコメントを投稿しよう!