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 雨は嫌だ。  身長151cmの私が傘を差すと、周りはみんな腰から下しか見えなくなるし、人と並んで歩く時は視線が届かなくて面倒だ。 「綾瀬さん」  通勤する人々の群れに混じって会社への道を歩いて居ると、頭の上から指先で傘をノックする男が居る。 「花村君?おはよう」 「おはようございます。梅雨入っちゃいましたね」  傘の上から声がする。  花村遼介はうちの営業で180センチ超の26歳独身。女子社員にも人気がある。33歳のおばさんから見たら眩しい限りだ。 「梅雨ねえ。嫌な季節」 「傘差すと周り見えないからですか」  天然なのか、人が気にしていることをはっきり言う。 「まあね。あんたは見晴らし良くて関係ないだろうけど」 「いや、これはこれで不便なんですよ。たとえば」  私の傘をひょいとつまみ上げて彼は傘の下を覗き込む。 「ほら。顔見て話そうと思うとこういうことになるし」  こっちは巨人に天井から覗き込まれた小人の気分だ。 「分かったから前向きなさい。危ない」
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