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「郵便局行って来ます」  あれから数日。なかなか来ないエレベータを使わず階段を降りていると、上がって来た花村に会った。鞄と傘を持って、外回りから帰ったところらしい。 「お帰りなさい。お疲れ様です」  他の営業に言うのと同じことを言ってすれ違おうとすると 「この前の返事は」 と呼び止められ私は踊り場で足を止めた。  普通に向き合うと私の身長は彼の胸のあたりで、郵便物を抱えて私は水色に白の縦縞の入ったシャツを見て話す。 「えっと……私じゃなくて、他に花村君に時間取ってもらいたい人居るんじゃない?」 「どこの誰のことを言ってるのか知りませんけど、そういう人とは話は終わったし、今は僕は綾瀬さんと話してるんですが」 「……そうだけど、……なんで私なんだろうって」 「それ聞きますか。いきなりそれ言うと引くだろうから、とりあえず時間くださいって言ってるんですが」  と、言われても……。 「じゃあ逆に聞きたいですけど、なんでダメなんですか」  封筒を胸に私は俯く。 「……私より他に相応しい人が居るだろうって思うから。たかがデートでも。花村君と居て違和感無い人は他に」 「じゃあ、他の人が僕らが一緒に居るところを見なければいいわけですね?」
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