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思い出レストラン2
既にランチの営業は終了して誰もいない定食はるたの引き戸が勢いよくあく。集金でもあったかと調理場から顔を出した春田の目に写ったのは昔からの友人だった。
「やあ。」
喪服に似たデザインの葬儀屋の制服を着たままで店にに来た男を見て春田は溜息をついた。
着替えもせず店に来る時は大体碌な用事じゃない。
「ちょっと頼みたいことがあるんだけど。」
「ツケがたまってる人間から新しい頼み事は受けたくないんだけど。」
葬儀屋はへらりと笑う。けれど、金を払う様子は無い。
「今回は俺がお客じゃないよ。」
「じゃあ、誰だよ。またユーレイか?」
半ばうんざりして葬儀屋が訊ねる。
「ユーレイって酷い言い方だね。」
「既に死んだ人間は客にはならないだろ。」
「じゃあ、今回は生きてる人間だ。」
俺はユーレイなんか見えないって言ってるだろ?葬儀屋は春田を馬鹿にしたように笑う。
「なんだよ、普通に飯ならここに食べに来ればいいだろ?それとも料理教室でもやれっていうのかよ。」
「んー。おしいね。」
勝手にカウンター席に座った葬儀屋が言う。
「今日葬儀があった方なんだけどね。生前得意料理があったんだ。」
「で、またユーレイと料理をしろってことだろ?」
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