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春田が面倒そうに言うと、葬儀屋はちょっと違うと笑った。
「レシピはあるんだ。」
「なら、その通り作ればそれでいいだろ。」
少なくとも春田の出る幕では無い。
けれど葬儀屋は撫でつけた髪をガリガリとかいてそれから「食べられないんだ。」と言った。
「は?レシピがおかしいってことか?」
「ご家族が言うにはそれもあるかもなんだけど、一番の問題はその『ケーキ』が食べたいカナちゃんが今小麦粉アレルギーでレシピ通り作っても食べられないって話なんだ。」
もう既に面倒な気配しかしない。
製菓はレシピが重要でそれ通りに作ってるのに何か違うのはもう思い出補正ってやつだろう。
そんなもんに付き合っていてもらちがあかないし、アレルギーなら代替してやれば良い話だ。味が変わるのは仕方が無いだろうに。
「米粉で代用するとかでいいだろ。」
「味が違うだろ?君料理人の癖に割とそういうところ適当だよね。」
葬儀屋に言われ思わず舌打ちをする。
「俺は、俺の作る料理にだけ真摯ならいいんだよ。」
「最高のレシピの再現を別の食材でするっていうのも割と真摯だと思うよ。」
葬儀屋はもう頼むと決めているらしく「レシピ通りのケーキ普通に美味かったし参考になるよ。」と付け加える。
「味音痴の評価が当てになるか!」
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