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休日、春田は葬儀屋と並んで客間のソファーに座っていた。
出されたのは真っ白な生クリームを塗ったごくごく普通のショートケーキの様だ。
けれど、春田は正直ケーキどころでは無かった。
(だから、若い子が死ぬのはいやなんだ。)
春田は心の中で悪態をつく。
部屋の隅でボロボロになっている少女がたたずんでいる。
恐らく葬儀があったのはこの少女なのだろう。大学生位だろうか。少なくとも春田よりは年下に見える。
若い人間が死ぬのは交通事故みたいな思いがけないものが多い。
だから、こうやって春田にだけ見える姿も元の人間だった時の姿をとどめていない場合も多いのだ。
血の匂いまでしてきそうで、恐ろしくなって思わず立ち上がる。
「どうした?」
葬儀屋が声をかけてきたが、説明はできそうにない。
「すいません。お手洗い貸してください。」
それだけ言うので春田は精いっぱいでよろよろとトイレへ向かった。
魚だの肉だのをさばいた経験はあるし、なんなら生きているすっぽんを料理したこともある。
爬虫類は切った位じゃ生きているから血だのなんだのには慣れている方だろう。
だけど、やはり人間は別だ。
春田は吐き気をこらえて冷たい水で手を洗いついでに顔もゆすぐ。
レシピだけ貰って店に戻って味の調整をしよう。
春田がそう思った瞬間だった。
肩をとんとんと二度叩かれたのは。
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