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再会
「おい、久しぶりだな!」
「お、おう?」
「元気でやってるか?」
「ま、まぁな」
どこにでもある旧友同士の再会。ただ、この両者は普通じゃなかった。
ばったり出くわした場所というのも……。
「場所」という定義に当てはまると言えるのかどうかだ。
そこは何もなかった。
広大無辺で真空の世界。チリどころか素粒子の一つすら存在しない空間。
いや、空間や時間という存在すら怪しい。
「で、お前、何やってんだよ?」
旧友が知人に近況を尋ねた。
「えっ? ふ、普通に『宇宙』をやってるよ」
知人こと宇宙A(仮名)はぶっきらぼうに答えた。
「ほぉー。じゃあ、ビッグバンとか何とか?」
旧友(宇宙B(仮名))は近況に興味を持ったようだ。
「あ、うん。いや。ち、知的生命体が生まれたんだ」
「おおーっ! おめでとう!!」
Bは知人の幸福を自分の事のように喜んだ。
「い、いや。大したことないよ。き、君だっていつか」
Aは気遣ったのか話題を切り替えた。
するとBは途端に顔を曇らせた。
「いつか、そのうち……か」
太陽風よりも強い吐息をふうっと何処からか吐き出した。
そしてそのまま押し黙ってしまった。
ブラックホールみたいな空気が漂う。
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