雨の日

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雨の日

今日は朝から雨。 先週はずっと晴れて暑かったのに、すっかり涼しくなっちゃって、調子狂っちゃうわ。 奥さんもなんだか調子が悪そう。 朝、ご主人が出ていくときも、無理しなくていいよって言ってるのに、掃除に洗濯、洗い物ってくるくる動いてたから、昼過ぎには力尽きてしまったみたい。 いつもの小さい粒を飲んで、今は横になってる。 私もそこが家の中で一番暖かいから、 奥さんの脇で丸くなっていた。 「こんなんじゃ、いつか、愛想尽かされちゃうね」 奥さんが、弱々しく笑いながら、私の背中を撫でる。 ご主人は今日も仕事で遅くなる。 いつものことだ。 でも、奥さんがしくしく泣いているのを、私は知ってる。 今の家は最近引っ越してきたばかりだ。前の家から、移動するのに随分ケージに入れられた。 空気の臭いも、山の臭いから、潮の臭いに変わった。 心細い、寂しい、不安。 そんなところだろう。 なのに、奥さんはご主人の前ではニコニコしてばかりいる。 お陰で、最近、雨のせいばかりでなく、私の毛並みはなんだか湿っぽくなってしまった。 勘弁してほしいわ! ご主人は昔からあなたのことだけ大好きだから、 そんなに心配しなくても大丈夫よ。 ご主人、仕事が大変なのもわかるけど、早く帰ってきてあげなさいよ。 私は少しイライラしながら、 ふぁーぁとあくびをひとつして、丸くなった。 もし、今日、ご主人がお酒?とやらの臭いをさせて帰ってきたら、思いっきり引っ掻いてやるんだから。
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