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マンションの部屋に入ると、智哉さんが私をバスルームに誘った。
早くお風呂に入りたかったし、久しぶりに密着したことで体が昂っている。私は素直に頷き、熱いシャワーと彼の愛情を浴びた。
「寝酒をどうぞ」
リビングのソファで身体を休める私に、智哉さんが湯呑みを持たせた。中身は甘酒である。
「疲れがとれるよ」
「ありがとう。いい香り……」
一口飲むと、自然な甘味が体じゅうに広がる。事件の夜以来、こんな風にリラックスしたことがない。
(智哉さんに抱かれたのも、久しぶり)
隣にゆったりと座る彼の胸に、身体を預けた。ここが私の、最高に安心できる場所だ。
「君に相談もせず山賀さんに協力を求めたこと、悪かった。スマートフォンを勝手に操作したのも謝るよ」
「ええっ?」
智哉さんがばつが悪そうにするのを見て、私は首を横に振った。
「どうして謝るの? 私のためにやってくれたのに」
「そうだけど、君以外の女性と秘密を共有するのは、後ろめたい気持ちだった。もちろん僕にとって彼女は、ただの協力者だけどね」
「あ……」
この人は、山賀さんの感情を知っている。私がそれに気づいたことも。その上で、彼女はただの協力者だと伝えたいのだ。
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