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「これも何かのご縁かな。以後、お見知りおきを」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
水樹さんは微笑み、私の名刺を大事そうにしまう。私も同じく、彼の名刺を丁寧に扱い、名刺入れにおさめた。
「ところで、靴の話だけど」
「あ、はい」
水樹さんは本題に入った。私のパンプスを見下ろしている。
「デザインが洒落てるし、君の足にぴたりと合っている。さすが一流メーカーのブランド靴だ」
彼はパンプスを褒めた。私自身が褒められたみたいで、何だか照れてしまう。
「だけど、かかとの部品がすり減って、滑りやすい状態になってる。このままでは、今日みたいなことが頻繁に起きるかもしれないな」
「そうなんですか?」
大事にしているつもりが、肝心の部分がなってなかった。それに私は、せっかくのレザーソールだからと、ハーフラバーも付けていない。
「修理したほうがいいですよね」
「ああ。トップリフトを替えるべきだ」
水樹さんは、パンプスから私に視線を戻す。とてもまっすぐな視線だ。
「もしよければ、今から僕の店に寄りませんか」
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