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(何だか、ドラマみたいな展開だわ……)
ことの始まりは、カフェの床に落ちていた氷だ。
それを踏んでパンプスを滑らせ、転びそうになった私を彼は助けた。その上、私のランチ代を支払い、靴修理のアドバイスまでくれた。
新たな顧客を得るための作戦かな――と、考えないでもなかった。
だけど、営業にしては親切すぎると思う。
もしかして、特別な感情が働いているのでは……
私は強く頭を振る。そんな都合のいいこと、あるわけがない。
水樹さんは日頃から、女性の扱いがスマートなタイプなのだ。女性にランチをご馳走するのに深い意味はなく、また、靴の技術者として、メンテ不足のパンプスを放っておけなかった。
ただ、それだけのこと。
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