レザーソール

29/39
前へ
/905ページ
次へ
(何だか、ドラマみたいな展開だわ……) ことの始まりは、カフェの床に落ちていた氷だ。 それを踏んでパンプスを滑らせ、転びそうになった私を彼は助けた。その上、私のランチ代を支払い、靴修理のアドバイスまでくれた。 新たな顧客を得るための作戦かな――と、考えないでもなかった。 だけど、営業にしては親切すぎると思う。 もしかして、特別な感情が働いているのでは…… 私は強く頭を振る。そんな都合のいいこと、あるわけがない。 水樹さんは日頃から、女性の扱いがスマートなタイプなのだ。女性にランチをご馳走するのに深い意味はなく、また、靴の技術者として、メンテ不足のパンプスを放っておけなかった。 ただ、それだけのこと。
/905ページ

最初のコメントを投稿しよう!

387人が本棚に入れています
本棚に追加