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帰りの電車の中、私は水樹さんの名刺を取り出し、じっと見つめた。
(ああ、まだ信じられない)
理想の男性と運命的な出会いを果たしてしまった。
しかも、彼のほうからアプローチしてくるなんて……
『今度、ゆっくり食事でもしないか』と、真面目な口調で彼は誘ってきた。
私は何も考えずに頷き、促されるまま、スマートフォンのアドレスを交換した。ドキドキしすぎて指先が震えるのを、彼は気付いただろうか。
(本気なんだよね、水樹さん)
彼のようにきちっとした人が、軽い気持ちでナンパするとは思えない。信じられないけど、信じてもいいと私は感じている。
車内にアナウンスが流れ、駅が近付いたことを教える。私は名刺を大事にしまってから座席を立ち、ドアの前に移動した。
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