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「あっ」
ホームに入る少し手前の線路に分岐器があり、車両がガクンと揺れた。
手すりにつかまっていなかった私はよろめき、横に立つ人に肩をぶつけてしまった。
「すっ、すみません」
背が高く、がっしりとした体躯の男性だ。私をじろりと睨んで、ぷいと顔を背けた。
(怖……)
ぼさぼさの髪に、無精ひげ。作業服の上にくたびれたジャンパーを羽織っている。一瞬見えた顔は、かなりのコワモテだった。
水樹さんと同年代のようだが、スマートで紳士な彼とは真逆のタイプである。
(ぶつかったのは悪いけど、睨まなくてもいいのに)
電車が停まり、ドアが開いた。
コワモテの男性が降りるのを見て、何となくいやな気持ちになる。同じ駅を利用するということは、今後も出くわす可能性が高い。
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