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空になったマグカップを手に、本店勤務の三年間を振り返ってみる。
同僚に若い男性はいたが、仕事仲間以上の感情は持てずに終わった。というより、男性として意識する余裕が無かったのかもしれない。
「仕事以上に夢中になれる男の人に、出会いたい。でもそんな人、いるのかしら」
今後も、しばらくは忙しい日々が続くだろう。
余裕ができたらアンテナを伸ばしてみようとか、つらつら考える。
理想の男性は、大人で、優しくて、恋人を大切にする人。
むくむくと妄想が膨らんでくる。
仕事人間と思われがちだが、私は意外にもロマンチストなのだ。
「なーんて……そんな都合のいい展開、あるわけないよね。片付けも終わったし、街でランチでも食べようっと」
エプロンを外し、ポロシャツとパンツを脱いでワンピースに着替えた。軽くメイクをして、結んでいたセミロングの髪を解いて肩に垂らす。
「そうだ、お気に入りのパンプスを履いていこう」
身支度を整えると、戸締りをしてからアパートの部屋を出た。
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