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「そんなの全然、気にしてないよ? スマートフォンだって、あなたに見られても構わないし」
「そうなのか?」
「うん。山賀さんに口止めしたのは、私の負担にならないよう気を遣ってくれたんだよね。私を守るために」
「ハル……」
ぎゅっと抱きしめられた。髪を撫でる仕草が、いつにも増して優しい。
「僕はどんなときも、君のことを心配してる。今回も、とんでもない事件に巻き込まれて傷ついてるんじゃないかと……」
「そんな……確かに土屋さんのことはショックだったけど、そのおかげで智哉さんの愛情を感じられたし、絆が深まったと思うの。変な言い方だけど、事件があったからこそ分かることができた」
「そうか」
智哉さんは身体をそっと離して、私の目を覗いた。
「店長が捕まって事件にけりがついたら、今後のことを具体的に進めよう。ずっと後回しになってるからね」
「ええ」
結婚のことだ。
プロポーズを受けたものの、いろいろなことがありすぎて停滞している。私も、早く話を進めたかった。
「僕たちは自由だ。今度こそ必ず……」
智哉さんがはっとした顔になり、唇を結んだ。
「どうしたの?」
「いや……」
私がじっと見つめると、もう一度抱きしめる。しばらくそのままでいたが、やがて明るい声で言った。
「これまでいろんなじゃまが入ったが、今度こそ大丈夫だってこと。店長も土屋もいない。誰にもじゃまされず、幸せになろうな」
「うん」
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