冬の七夕

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 教卓上部の板がもの凄い音を出して割れた。古い備品だとは思っていた。粉々の木片が生徒たちへ向けてばらばらと飛び散っていく。 「うわっ」 「きゃあっ」 教室中の生徒が頭を庇ったり顔を覆ったりして悲鳴をあげた。その後は一瞬の静寂。そして、どっと笑いが起こった。 「日本人は頭がおかしい」 「弁償になるけれど、きっと先生のお小遣いでは足りない」 「新しい先生は帰国して交代」 そんな意味の嘲笑が聞こえた。Nまではしゃいで大笑いをしている。先ほど切りつけそうになった生徒と手を握らんばかりに楽しそうだ。一番前の廊下側に座っていた生徒は既に職員室へと教室を走り出た。主任がやってきて自習になるだろう。  ああ、何だってこんなに駄目教師なのだろう。やはり教員免許が無いとこうなるのか。今回こそはクビ・・・、には流石にならないか。何しろ地球の裏側から赴任しているんだから。  教室のあちこちから飛び散った木屑が紙ヒコーキの代わりに飛んでくる。僕は何の反応をする気にもなれず、唯々自己嫌悪に立ち尽くしていた。
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