第1章 始まりは突然に

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「んー、寒いわ」 寒さに眠りを妨げられたあたしは目を瞑ったまま身を丸くした もう5月なのにこんなに冷えるなんて あたしは夜中に蹴飛ばしてしまったはずの毛布を手繰り寄せようと横になったまま足元に手を伸ばした しかし毛布は見つからず、自室にいるはずなのに冷たい風が吹いていることに気付き、一気に目が覚めた ここ、あたしの部屋じゃない 驚いて起き上がって目を開けるとまだ真っ暗で、ずっと高い小窓から入る月光でどうにか部屋を見渡せた 6畳程度の広さの細長い部屋で天井はとても高いところにあった 扉は1つでまるで牢獄のように格子がはめられている 窓は月の光の入るあの小窓と扉に付いた格子窓だけで、石造りの壁や床、硬いベッドは快適さを全く与えない あたしはほとんど期待することなく扉を押したり引いたりしてみる はじめはそっと押してみたが動く気配がないので、次第に激しく扉を揺すってみたが変わらなかった 寒さと恐ろしさに肉体的にも精神的にも余裕がなくなり、ズキズキと頭が痛む どうなっているの? あたしは扉の前に膝を抱えて座り込み、膝の間に頭を入れた
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