第1章 始まりは突然に

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「ごめんなさい、親切はとても嬉しいのだけれど知らない人から貰ったものは口に入れてはいけないと思うの」 大体、あたしを誘拐して牢獄に押し込めたくせに今度は手のひら返して看病するなんてどういうこと!? 「何を仰いますか、わたくしは一日中貴女様を看病しておりました。案ずることはございませんわ」 彼女はまたカップを差し出してくる そうかしら?段々怒りが湧いてくる 「では、一体あたしを誘拐してどうするつもりかしら。あなたの格好も、このお屋敷も誰の趣味だか知らないけど悪趣味よ。早く家へ帰して頂戴」 彼女は唖然としていた あたしだって言うときはちゃんと言うんだから 「やっぱり水は貰うわ。あたしを殺したいなら既に殺せたはずだもの」 あたしは彼女の手からカップを奪い取ると水を飲み干した 2日ぶりに胃に物を入れた 今度は立ち上がって扉へ向かおうとすると、足がもつれて倒れそうになってしまった 「危ないですわ、まだ病み上がりなのです」 思ったより体力が落ちていたみたいだ 扉の鍵が開いているのはさっき彼女が入ってきた時から確認済みだったのに
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