0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
むかーし、むかし。
ある若者が、それはたいそう美しい娘に言った。
「どうか、嫁に来てくれ」
と。
その日から雨が降った。
ぽつぽつ。
しとしと。
ざあざあ。
毎日、毎日、雨が降った。
さて、どこの集落にも口さがない者がいる。
そいつが若者に向かって、こう言った。
「お前の嫁は『雨ふり女房』だ」
と。
毎日、毎日、若者に言った。
若者はいたたまれなくなり、娘に言った。
「お前はもう要らん。出ていけ」
と。
娘は出ていった。
次の日、あの長雨がうそのように、からりと晴れた。
毎日、毎日、晴れた。
やがて秋になった。
作物はみんな枯れた。
若者はやっと娘を愛していたことに気づいた。
「すまなかった」
若者の涙が畑に落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!