雨ふり女房

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 むかーし、むかし。  ある若者が、それはたいそう美しい娘に言った。 「どうか、嫁に来てくれ」  と。  その日から雨が降った。  ぽつぽつ。  しとしと。  ざあざあ。  毎日、毎日、雨が降った。  さて、どこの集落にも口さがない者がいる。  そいつが若者に向かって、こう言った。 「お前の嫁は『雨ふり女房』だ」  と。  毎日、毎日、若者に言った。  若者はいたたまれなくなり、娘に言った。 「お前はもう要らん。出ていけ」  と。  娘は出ていった。  次の日、あの長雨がうそのように、からりと晴れた。  毎日、毎日、晴れた。  やがて秋になった。  作物はみんな枯れた。  若者はやっと娘を愛していたことに気づいた。 「すまなかった」  若者の涙が畑に落ちた。
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