遭い遭い傘

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「ねぇ、『()()い傘』って、知ってる?」  降り続く雨のせいか、どんよりとした空気が満ちる教室。  授業の終わりを告げるチャイムが響き、休み時間に入るやいなや、美奈子が長いポニーテールを揺らしながら駆け寄ってきた。  その質問の意図がわからず、私は美奈子に尋ね返す。 「相合傘くらい、知ってるよ。美奈子がいつも悟志くんとやってるじゃない。なぁに、新手の惚気(のろけ)なの?」 「ちがう、ちがう。そう怖い顔しないでよー。……私が言ってるのは、『()()い傘』。さっき、授業中に見つけた記事なんだけどね……」  そう言って、美奈子はスマートフォンの画面を私に見せる。そこには、真っ黒な背景に赤い血のようなフォントで「遭い遭い傘」と書かれていた。
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