あなたには見えない。

3/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 中学の頃までは帰りも一緒だった。部活も同じ、吹奏楽部に入っていたからだ。 高校生になっても、同じ部活に入るだろうと思い、私はまた吹奏楽部に入った。 でも、修司は違った。けして得意ではなかったはずなのに、何故かサッカー部に入部したのだ。 「なんでサッカーなの?好きだった?」  そう聞くと、修司は私から目をそらした。 「別に…もうちょっと運動しようかなと思っただけ」  釈然としない気持ちのまま、そうなんだ、とだけ私は返した。 すぐに辞めてしまうんじゃないかと思っていたけれど、予想に反して修司は、1年経った今もサッカー部を続けている。 1度だけ試合を見に行ったことがあるが、修司は試合に出ることはなく、最後までベンチでずっと応援をしていた。それでもキラキラと楽しそうにしている姿を見て、私の心は何故か、ちくりと痛んだ。 それ以来、試合を見に行ったことは無い。  吹奏楽部の練習が終わり、帰ろうとグラウンドの横を通ると、そこではサッカー部がまだ練習をしていた。 うちのサッカー部はなかなか練習熱心で有名らしい。見ると、修司もグラウンドで一生懸命ボールを追いかけていた。 上手いか下手かは、私にはわからない。でも、気づけば修司の姿を、しばらくの間追いかけていた。  ピッと、笛の音がする。どうやらサッカー部も、そろそろ練習が終わりらしい。 声をかけようか悩んでいると、1人の女の子が修司に駆け寄っていくのが見えた。 新しく入った1年生のマネージャーのようだった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!